伊万里を代表する紋様に蕗の煮付け

  • 2017.04.18 Tuesday
  • 13:52

写真 5.JPG
先日、顧客のTさんの御家庭料理を御裾分け頂きました。
Tさんの作る蕗の煮付けは素材の味が引き立つ調度良い塩梅が私好みで、毎年、季節の移り変わりをもお届け頂き、有り難く御馳走になっております。

蕗は、
大きな鉢に盛り付けても良し。
料理屋さんのように1本ずつ丁寧に並べて積み上げるように盛り付けても良し。

今年は現在店頭に陳列している伊万里の代表格である紋様が揃い組でありましたので、そちらで御案内させて頂きます。
ここからは器のお話になります。

染付とは藍色一色のみで描かれているものを称するのは収集家の方々は既に御存知かと思いますが、また少し初心に付き合い下さい。
伊万里焼と有田焼はどのように違うのですか?との御質問を古美術、骨董初心者の方は必ず仰います。
不思議に思われると思いますが、伊万里と有田は同じです。
呼び方が時代で変わるのですが、こちらの伊万里、有田は共に江戸時代に入ってから現代に至まで佐賀県で作られております。

江戸時代、主にヨーロッパに向けて磁器を輸出するようになり、その時に「伊万里港」から出荷していたことから伊万里焼と称するようになり、明治時代に入ると、全国的にやきものが作られている産地名で称することが一般的となった為、明治以降は有田焼と称し、現代も有田焼として現代物を販売される場所では札には「有田」と刻印されております。

古美術の世界では江戸時代に作られた有田焼は時代を明確にすることから伊万里と称しているのと共に、現代のものと区別を付ける意味合い、そして、その時代の陶工に敬意を示すように…そのように称しているのではないかと、これは私の考えであります。

伊万里と云えば、画像の藍色と、もう一つ、朱色が特徴のやきものです。

この藍色だけで紋様や風景、動物、人物を描いているものを統一して染付と呼びます。

その中でも様々な紋様があり、今回、画像にあげているのは上が蛸唐草紋様。下が微塵花唐草紋様。
どちらも伊万里染付の中では代表する紋様であり、これらも絵師により上手なものや描き慣れていないような出来のものもございます。

今回は更に時代をわかりやすく藍色の色調が異なるものを御紹介します。

上が江戸の幕末期。
下が江戸の後期。
共に「伊万里」とします。

これより古いものは当店では
1700年代が古伊万里
1800年代が初期伊万里
と、時代で呼び方を分けて御案内しております。
(店頭では西暦で商品ごとに区分けして御案内しております/御来店時に御確認下さい)

最近では全て古伊万里、古伊万里と案内されていることも多く、この初期から幕末にかけての時代を明確に判断するにはお客様の眼がどこまで見抜けるか?にかかっていることも残念ながら記載させて頂きます。
当店ではできる限り明確にして御案内させて頂いております。

わかりやすく申し上げましたら、上の画像は紋様だけでなく藍色の「違い」にも注目して頂きたくアップしました。

藍色を呉須(ゴス)を称します。
これは絵付をする時の青い藍色と書いて青藍(セイラン)という顔料を称するのですが、これを呉須と以下、統一します。

写真 1.JPG
*伊万里染付蛸唐草紋様蕎麦猪口6客←クリックで商品ページが開きます(古美術希のぞみ)(完売)

こちらは江戸の幕末期に作られた蕎麦猪口です。
呉須の色がコバルトブルーの鮮やかな色彩が特徴です。

蛸唐草紋様とは、このように曲線が全面を埋め尽くすように描かれ蛸の足のようにも見受けられることから称されるようになりました。時代は古伊万里から見られるようになり、江戸の中期頃から現代まで紋様として受け継がれております。

しかし、そもそもは?
こちらも仏教の伝来と共に伝わってきた忍冬(にんどう)唐草紋様が基となっており、蔓のしなやかな曲線が伸びやかに描かれている紋様を称します。

(唐草紋様の歴史はエジプト→ギリシャ→インド→中国→日本に伝来したとされております)

日本に伝わったとされる時代は飛鳥時代に中国より伝来し、その当時の唐草紋様は蔓に葉が添えられて描かれる唐草紋様でしたが、江戸時代中期に入ると、画像で紹介している蛸唐草紋様として伊万里の人気が広がります。

又、日本人の食卓に蛸は高級食材とされており、こちらも紋様を「蛸」唐草と称することへ、なんら躊躇いもなく、むしろ粋な表現として広がったかと想像出来ます。

江戸当時の食生活から見て取れるものは色々ありますね。

 

ついでとなりますが、蕎麦も当時は主に寺で保管する保存食として江戸(東京)を中心に全国に広がったとされております。

写真 2.JPG

*伊万里染付微塵花唐草紋様←クリックで商品ページが開きます(古美術希のぞみ)(完売)

 

続きまして、微塵花唐草紋様。

こちらも伊万里を代表する紋様の一つです。

「花」とは、藍色がまとまって見える所が小花を描いており、唐草紋様の変形版とも言える折り重なるように描かれた曲線が密集している所へアクセントとして小花が散りばめられております。

印象としては他の紋様よりも柔らかい雰囲気があり、画面全体を埋め尽くす筆の跡は絵付師の丹念な仕事ぶりが伺え有り難くも感じます。

 

こちらは先ほどよりも呉須の色彩が薄いと感じられるかと思います。

渋いとか薄い、優しい、など、個々人の言葉の表現により印象が異なるので、このお話はなるべく店頭でのみさせて頂いておりますが、言葉のニュアンスを汲み取り御拝読願います。

 

呉須の色彩から先ほどのものよりも、時代が古くなることがわかります。

このような呉須の色調は約江戸の後期まで用いられておりました。

勿論、古美術、骨董品には番外編も存在するので断定するのには至りませんが、王道として御案内します。

時代をみる基準は呉須の色調にもポイントがございまして、このように薄く柔らかく、もう少し加えますと肌の色がほんのり青みがかっているもの程、時代が古くなります。

 

見慣れてきますと、パッと見た雰囲気で時代を読み解くことが可能になりますので、数多くの古美術、骨董品をご覧になられることをお勧め致します。

 

その他にも高台の作りや全体の形状にも時代ごとの特徴があります。

しかし、どうも、ここをお話しますと頭が混乱されるので、まずは色味から覚えることを当店ではお勧めしておりますが、形状から入りたい場合は店頭でお声がけ下さい。

無傷で完全な原型を留めているものが店頭にあり、又、時代ごとに並べてお話できる場合もございます。

 

印判は?と最近、よく聞かれますが、印判も江戸の後期〜幕末頃から存在します。

しかし大半は明治以降です。

江戸時代の印判こそ、少々番外編としてご紹介しておりますが、現在、店頭にございます。

ご興味ございましたらご来店下さい。

こちらで、これが番外編です!とアップしてしまいますと、上記の文章が吹っ飛んでしまいますので、上記の内容がまずは定番として記憶して頂けましたら幸いです。

 

コレクター歴が長くなりますと、珍品とされるものをお探しになります。

初心者では理解できない番外編をいきなり所有されるのも有りですが、まずは、定番を押さえ、その先のご自身の好みを探る方が賢明かと存じます。

 

江戸時代の伊万里と申しましても初期伊万里〜古伊万里〜伊万里〜印判と百年ずつの違いがございます。

時代が古くなればなる程、それなりの価格になりますし、伊万里だけでなく、他のやきものに目を向けた時に、今度は伊万里で培った知識が通用しないものも正直ございます。

 

当店ではお客様の好みに寄り添う形でご紹介させて頂きますので、どれが良いですか?の御質問に応えられるのは何度か御来店されて御決断されたものが有り、それらをご納得されて所有されておられる方のみお応え出来る質問です。

 

しかし、きっと御自身と好みが似ている方は歴史を振り返るとおられます。

その好みが似ている方が良し!として残したものが目の前に現れた時が御決断の時だと思います。

 

そういう意味では善い方の元に納まり、更に受け継がれて行かれる心がある方を探すのが我々古美術商の仕事とも云えます。

 

古美術、骨董品の揃い組は大事にされてきた証でも有ります。

是非是非、ご検討下さい。

 

*染付唐草紋様←こちらも一緒に御拝読頂けましたら幸いです(古美術希ホームページが開きます)

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