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伝(でん)鑑定に纏わる言葉

当店では殆ど仕入れることがございませんが、巷に溢れる箱書に「伝〜」と記載されたものをご覧になられた方も多いはず。
又、美術館でも「伝〜」と表示されているものも少なくはありません。

*伝(でん)

さて、本日はこの「伝」とはなんぞや?と疑問に思われておられる方に向けてお話をさせて頂きます。

「伝」とは、伝承や伝説の伝を意味します。

寺院などの場合は言い伝えがある場合には「伝」を用いて受け継ぐことが多くございます。

しかし、この「伝」とは、『〜が描いたとされる』と言う実にアバウトな表記にも用いられております。

全てのものが贋作とは申しませんが、中には作られた時代よりも後の時代の鑑定士による結果から「伝〜」と記載されている場合も多くございます。

鑑定士の歴史を振り返りますと江戸時代にその存在は現れ折紙付や極付という言葉が生まれます。

*刀剣=本阿弥家(ほんあみけ)
*書=古筆家(こひつけ)
*絵画=狩野家(かのうけ)

上記記載の御三家の出す折紙(極)が権威があるとされております。
又、各々の先代の作に折紙(鑑定書)をつけて美術品(この時代は美術という言葉の概念は存在しませんが解りやすく美術品と表記)の格付けを行い流派を伝承するようになります。

*折紙(おりがみ)&極(きわめ)付とは=主に美術品の「鑑定書」を意味します。料紙を横に二つ折りにして書くことから折紙と呼ばれるようになりました。極も同意語。


「伝」と記載する場合の信憑性は如何程のものか?
これが一番気になるところかと思いますが、実に難しいと先に申し上げます。

例えて言うならば「伝〜」この〜に入るのは人物の名前だったりすることが多いのですが、解釈とすれば「そう伝わる」や「〜作と思われるが比較する作品が少ない為、作者と作品を作風だけでは断言出来ない場合」にも、この「伝」は使われます。

こう記載しますと「な〜んだ、伝って言うのは信用できないのか」とアッサリ解釈される方もおりますが、それは結果が出ていないだけであり時代毎に鑑定を行う人により評価や判断基準が異なるので、いずれ結果が出れば良いぐらいの気持ちでおられる方がよろしいかと思います。

更に落款(らっかん)も評価のポイントとなりますが、これらも作られた時代よりも後に押された場合もあり一概に真相を確かめる確実なポイントとは当店では判断しておりません。
(落款が気になる方は書店に落款辞典と言うものがございます。一般の方でも入手可能ですのでお手元の落款を確かめたい場合はご参考にされると良いかと思います)

掛け軸直々に落款が後から押されているものもあれば、箱書に「伝〜」と記載されていたり、はたまた刀剣の白鞘に「伝〜」と書かれているものや、桐箱に「伝〜」と鑑定士の名前と共に書かれていたりと、そのパターンは様々ございます。

当店では開店当初から箱書にはあまり触れずにお客様と接しておりますが、箱書よりも中身に注目して頂きたいと常にお話させて頂いております。
箱書をされる稼業の方(鑑定士)には大変失礼かと思いますが、確実に断言できる場合もあれば、そうでもない場合もあるのは事実です。
その後者の『そうでもない』場合の箱書が「伝」となりうるものである事を古美術商としてのべさせて頂きます。

この手のお話は店頭でよく行われるのですが、なかなか公の場に出すお話ではございませんので控えておりましたが、そろそろ皆様に箱書だけに頼るのではなく、御自身の眼を信用して頂きたく本日は記載させて頂きました。

実にニュアンスとして捉えにくい「伝」の表記。
古美術、骨董好きの方は間違いなく御存知のお話ではございますが、これから収集してみよう!とされている方へお伝え申し上げます。

尚、鑑定書の発行は現在も決められた場所で行われております。
鑑定書は発行してほしい!と言って発行できるものではございません。
美術品が折紙付として後世に残されるべきものに発行されます(されるはずです/そうであって欲しいと願います)←この辺りは含みを持たせておきます。

店頭にも鑑定書付の古美術品は御用意しております。
しかしながら、この鑑定書があるから!と言う理由ではなく、そのものが素晴らしいから手元に置き、次の世代の方へ受け継がれるようにお預かりしますの気持ちでおられる方の御来店をお待ち申し上げます。

伝。。。
実に難しい表記ですが美術業界では江戸時代から行われてきた表記であり「伝」に関しては先々の未来の方々へも大切に受継ぎ真相が明確になる頃には時代を経た文化財となる事を切に願います。

現代も盛んに行われておりますが、作者の弟子や親、兄弟によって作られたものも、この伝には含まれていると想像します。
日本美術による作家物の扱いが極めて慎重に行われるのも、このような背景からかと思われます。

贋作は認めがたいですが、事の真髄に触れるには、どの時代に生きようと己の眼にかかっている事を申し上げて本日の「伝」とは?の御案内は以上となります。

古美術品は実に面白いです。

 

author:古美術 希, category:余談, 16:59
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